アーティストとリスナーの「中」

この記事は以下の続きとなります。

  1. アーティスト応援券 - otmgkの日記

この動画の感想を書こうと思ってたんですが、だいぶ時間が経ってしまいました。

特に業界関係者でもないので、ほぼ眉唾と戯言の羅列となってしまいましたが、まあいいか。

youtu.be

最初、「アーティストとリスナー」という言葉が出てきたところで、「ああ、中抜きの話ね」と思ったんですが、そういうことでもなく、むしろ「中」の再定義が求められているという話でした。ちなみに、現在の音楽業界の「中」の実態は、CDがどのようにお金が分配されるかを見れば大体わかると思います。

togetter.com

CDという商品の取り分の多いのは、制作会社と小売店で、これがアーティストとリスナーの「中」ということになるでしょう。

 

*音楽を聴く形態が「CD」からSpotifyなどの「サブスクリプション」に変わることで一番困るのは間違いなく「小売」の方(売る商品がなくなるわけですから)で、同じ「中」という位置付けでも、「制作」と「小売」は分けて考える必要があります。で、以下は「小売」の話です。

 

さて、私が先の動画で面白いと思ったのは、「配信だとCDより盛り上がらない(4:43あたりから)」という部分です。

ネット通販などで「中抜き」が進行している中、リアル店舗の役割とは何だろう?ということも話題になっています(興味のある方は「リアル店舗」+「意味 or 役割 or 存在意義」などで検索してみてください)が、私はこの「盛り上がらない」という意見を見て、「リアル店舗は『消費行動のトリガー(引き金)』という役割もあるのではないか」と思いました。以下がこれに近い意見だと思います。

orange-operation.jp

 

ネットで買い物するのはどういう状況だろうと考えてみると、

  • 「気になったものがある」→「商品検索をする」→「評価を見る」→「買うかどうか決める」→「他のお勧めを見る」→最初に戻る

みたいな感じじゃないでしょうか。最近はSNSのプロモーションなどで「気になったもの」をネット経由で知ることが多くなっていると思いますが、消費のトリガーは「気になったものを見つける」というところにあると思います。

 

で、リアル店舗の場合は、特に目的もなく歩いているだけで気になったものが目に留まる、という特色がある(そういう風にデザインできる)わけです。

  • 「新しいものを見つけたい」→「リアル店舗に行く」→「うろつく」→「気になるものがある」→「評価などをネットで調べる or 店員さんに直接聞く」→「買うかどうか決める」→「うろつく」に戻る

という感じでしょうか。

ファッションだと、季節ものを予算を決めて「今年はどんな感じのものが出ているかな?」というワクワク感を持って、リアル店舗にショッピング体験をしに行く人も多いと思います。そんなことが音楽でもありえて、例えば「ジャケ買い」という体験はリアル店舗の方が起きやすいと言えば伝わりますかね。小売の「中」としての役割はまだまだ大きいのではないかと思った次第です。

 

それで問題は、音楽の場合、たぶんCDという商品は近いうちに無くなるだろうという点です。なぜかというと、CDの再生装置が無くなると思うからです。最初の動画でもカーステレオにもはやCDプレーヤーがないという話も出ていますが、今はパソコンでも再生できません(以前はアプリ・OSのインストールにディスク再生装置は必須のものでした)。そしてCDというソフトは売れなくなっており、CDが無くても音楽を聴くのに困らない。ソフトが売れなくなればハードも撤退していくのが自然な流れです。

 

この予想が当たった場合、CDショップはCDに変わる商品を扱わないと生き残れないんですよね。。。それではCDに変わる商品が何かあるのかというと。。。いくつか候補があります。

 

まずCDの延長である再生メディアとしては、アナログレコードが注目されています。

jaykogami.com

www.sankeibiz.jp

ただし、この記事にもあるように、アナログレコードはコレクターの「所有欲」の満足が主であり(実際にレコードを再生することは稀らしい)、マニアックな商品の域を出ることはないでしょう。これだけで商売が成り立つとは思えません(小規模店舗は逆にマニア向けでいけるかもしれませんが)。

 

それでは何を主体に売ればいいかというと、今実際に音楽でお金が流れているのは「ライブ」と「物販」だと思います。なので、CDショップもこちらにシフトすればいい、というかこれ以外に無いのではないでしょうか。

具体的には、

  • 様々なアーティストの物販を仕入れ、実際に見て買える場所にする(CDやアナログレコードなども物販の一種という扱いです)
  • 物販のないアーティストのために、物販の制作も請け負う
  • ライブやフェスを企画し、参加ミュージシャン全体の物販販売ブースを設け、販売を全て請け負う
  • 大規模店舗の場合は簡易なライブをこまめに行う

実際には、ライブやフェスがメインイベントで、メインイベントのためのプロモーションの場であったり、アンテナショップ的な場所という位置付けになるでしょう。

 

具体策は実際に現場の人が考えた方がいいアイデアが出ると思いますが、「CDという商品はなくなる」「CDの完全な代替物はない」「リアル店舗では実際に扱う商品が必要」「リアル店舗の特色を生かし、新しい音楽との出会いの場というコンセプトを重視してみる」といった観点で商品を見直す、または、新しく作るということをしないといけない時期に来ていると思います。

 

CDショップの未来とは別に、「フェスなどでの人気アーティストの物販の行列をなんとかしたい」というのと、「インバウンドを重視するなら海外でも人気の国内アーティストの物販が1箇所で全て手に入る場所があった方がいい」というのは以前から思っていたことです。上のアイデアだと、この問題も解決するので、わたし的には「あり」な話として書いてみました。