1960年代ロック
当初の予定では1950年代、60年代のポップス系の音楽を軽く紹介した後に、60s、70s、80sロックに触れようという魂胆でしたが、60年代ロックで力尽きました。残りはまたX年後にトライしたいと思います。
最初に、1950年代「ロックンロール」の有名アーティストを補っておきます。アーティストと曲についてはリンク先のWikipedia(ほぼ日本語ページがあります)を参照ください。
- Little Richard - Long Tall Sally (1956)
- Chuck Berry - Sweet Little Sixteen (1958)
- Fats Domino - Ain't That a Shame (1955)
- Eddie Cochran - Summertime Blues (1958)
- Gene Vincent - Be-Bop-A-Lula (1956)
後の「ロック」に多大な影響を与えたアーティストおよび楽曲ですが、この頃はまだ「ロックンロール」というジャンルであり、どちらかと言えば新種のダンスミュージックという位置付けだったと思います。実際、「1950s Rock and Roll」で検索するとダンスの動画(映画のシーンが多いですが)がかなり見つかりますし、面白いことにSwing Jazzの名作「In The Mood」を含むものが多かったりします。
- Bill Haley & His Comets - Rock Around The Clock (1954) ※最初のRock 'n' Roll と言われる曲
- Glen Miller - In The Mood (1939)
さて、1960年代ロックですが、15曲選んでみました。ビートルズからジミヘンまでは無難な人選(曲は変わるでしょうが)だと思いますが、それ以外は選ぶ人によってかなり変わるでしょう。一般的な評価は「Rolling Stone誌が選ぶ〜」の60年代のものを調べるといいかもしれません。
- 100 Greatest Artists – Rolling Stone
- 500 Greatest Songs of All Time – Rolling Stone
- 500 Greatest Albums of All Time – Rolling Stone
コメントは主に個人的な思い出を綴ったもので、アーティストや曲の解説というわけではありません。それぞれの詳細はリンク先のWikipediaを参照ください。アーティストの活動期間はデビュー曲のリリースから最初の解散またはアーティストの死去までです。ちなみに、リアルタイムで経験・聴いていたわけではありませんよ。
- The Bealtes - A Hard Day's Night (1964)
- 100 Greatest Artists - Rolling Stone #1
- 500 Greatest Songs of All Time – Rolling Stone #154
- 活動期間:1962〜1970年
最初に聴いた洋楽は、カーペンターズかビートルズです。どちらも心地よいポップソングとして聴いていました。「ポップ」で「親しみやすい」。子供でも楽しめる曲を作って、歌ってくれる人たちという認識ですね。その後アルバムを聴くようになって、改めてビートルズの音楽性の幅広さを知ることになりますが、今でも根本の部分ではその認識は変わっていません。Tomorrow Never Knows (Audio) - YouTube (Official)、Helter Skelter (Audio) - YouTube (Official)、Strawberry Fields Forever (MV) - YouTube (Official) といった曲にしても、普通の人がこのアイデアに飛びついたところで、一般人が楽しめるものにはならないと思うんですよね。それを担保したのは、彼らの優れた「ポップ感覚」だったのではないかと思います。
- The Rolling Stones - (I Can't Get No) Satisfaction (1965)
- 100 Greatest Artists – Rolling Stone #4
- 500 Greatest Songs of All Time – Rolling Stone #2
- 活動期間:1963年〜現在
たぶん小学校高学年の頃ですが、たまたまラジオから流れていたこの曲を聴いてある種の衝撃を受けました。それまで聴いていたポップスの「明るさ・楽しさ」、バラードの「切なさ」とは全く異なる「新しい何か」をこの曲から感じました。「これは一体なんだろう?」という疑問を持ち、後にその正体を探り始めたのが、Rockにハマるきっかけになります。
- The Who - My Generation (1965)
- 100 Greatest Artists – Rolling Stone #29
- 500 Greatest Songs of All Time – Rolling Stone #11
- 活動期間:1965年〜現在
どうやら「Rock」という音楽ジャンルがあるらしい、ということがわかったので、中学になってラジカセを買ってもらったのを機会に、FMラジオでRock特集を聴いてみました。で、Rock というと必ず紹介される曲の一つがこれなんですが、私の第一印象は「急ぎすぎ?」というものでした。Rockにはこの手のスピード感を特徴とする曲も多いですが、私が求めるものはこれではないな、という感じです。ビデオの最後にあるような派手なパフォーマンスも、個人的には好きではないかな。
- The Kinks - You Really Got Me (1966)
- 100 Greatest Artists – Rolling Stone #65
- 500 Greatest Songs of All Time – Rolling Stone #80
- 活動期間:1964〜1996年
Rockを聴き始めの頃、一番「なんじゃこりゃ?」と思った曲です。メロディーではなく、ギターリフを中心に構成された曲を聴くのが初めてだったので、「これって曲にあるべき(と当時思っていた)要素が足りなくない?」と感じたんですね。どうも曲の構成からして、これまで聴いていたのとは違うらしい、というか、音楽はいろいろやっても良いんだな、ということがわかってきました。
- Cream - Sunshine of Your Love (1967)
- 100 Greatest Artists – Rolling Stone #67
- 500 Greatest Songs of All Time – Rolling Stone #65
- 活動期間:1966〜1968年
で、本当の意味でRockに心を持って行かれたのはこの曲です。それまではメロディの好き嫌い=曲の好き嫌いだった(=「自分が歌った場合に気持ち良さそう」が評価軸だったということですね)んですが、これは完全に演奏にやられました。今から考えると、パフォーマンスそのものよりも、この「重さ」を生み出したアレンジの方が効いていたかな。そのことに当時気がついていたら何か楽器を始めていたかもしれないな、と今更ながらに思います。Creamは White Room - YouTube もお薦めです。
- The Doors - Light My Fire (1967)
- 100 Greatest Artists – Rolling Stone #41
- 500 Greatest Songs of All Time – Rolling Stone #35
- 活動期間:1967〜1972年(ボーカルのJim Morrisonは1971年死亡。享年27歳)
ドアーズはベースなしで代わりにオルガンが入るという珍しい編成のバンドです。音楽的にはそのオルガンに特徴があります(少し賛美歌的というか宗教的な色合いを帯びる)が、何と言ってもボーカルの Jim Morrison の存在感、パフォーマンスが圧倒的で、そのカリスマ性は歴代ロックアーティストの中でも際立っています。そして、残念なことに、その後に続く「破滅型ボーカリスト」の先駆けともなってしまいました。ドアーズの曲では、映画「地獄の黙示録」で使われた「The End」も有名だと思いますが、その演奏動画(「The End - YouTube」)も残っています。
- The Jimi Hendrix Experience - Purple Haze (1969)
- 100 Greatest Artists – Rolling Stone #6
- 500 Greatest Songs of All Time – Rolling Stone #17
- 活動期間:1968〜1970年(Jimi Hendrix死亡。享年27歳)
ロックの「カリスマ」というと、もうダントツでこの人なんですが、最初聴いた時はただただ「???」でした。「わからない」というより「わかりたいのに拒絶される」感じが強かったですね(今でもそんな感じはあります)。ただ、Rockを聴くきっかけとなった、単純な「快/不快」とは異なる軸の「何か」がわかりやすく出ているのではないかとも思いました。今回の60年代ロックのリストの中から現在の音楽シーンにも影響を与えうるアーティストを選ぶとなると、ビートルズかこの人、どちらかになるのではないでしょうか。
- The Velvet Undergound & Nico - I'm Waiting for the Man (1967)
- 100 Greatest Artists – Rolling Stone #18
- 500 Greatest Songs of All Time – Rolling Stone #161
- 活動期間:1967〜1973年
不穏なリズムとノイジーな楽器音の繰り返し。「快/不快」で言えば、「不快」に寄った要素を散りばめながらもギリギリのところで止まる感じは、案外、今のメタルやインダストリアルミュージックに通じるところがあるかもしれません。このグループは、他の多くのロックバンドと異なり、R&Bやロックンロールとは異なるルーツを持つようです。メンバーは現代美術の巨匠アンディ・ウォーホルと交流があり、ウォーホールはデビューアルバムのジャケットカバーも手がけています。
- The Spencer Davis Group - I'm a Man (1967)
- 活動期間:1965〜1969年(ボーカルのSteve Winwoodは1967年脱退)
Spencer Davis Group は Gimme Some Lovin' - YouTube (500 Greatest Songs of All Time – Rolling Stone #247) が有名ですが、一般的な知名度はそんなにないかもしれません。この曲は先に紹介した The Velvet Underground「I'm Waiting For the Man」と聴き比べると面白いんじゃないかと思って選んでみました。やはり冒頭から何やら不穏なリズムが奏でられますが、こちらはしっかり R&B をルーツに持つというか、普通は R&B に分類されるバンドによる演奏です。私がここから感じるのは、この不穏さを打ち消す/打ち克つ「熱」のようなものですかね。ちなみにボーカル/オルガンの Steve Winwood はこの時まだ10代でした。
- The Beach Boys - California Girls (1965)
- 100 Greatest Artists – Rolling Stone #12
- 500 Greatest Songs of All Time – Rolling Stone #72
- 活動期間:1961年〜現在
ビーチ・ボーイズは、Surfin Usa - YouTube (1963)、Fun Fun Fun - YouTube (1964) など、快活なサーフロックの印象が強く、これ以降の曲は聞いたことがなかったんですが、David Lee Ross によるカバー - YouTube (1984) がパロディっぽかったので、原曲はどんなものかと聴いてみてビックリ。原曲がすでにセルフパロディみたいなものだったのです。作風が短期間で一変した感じだったので、何かあったのかと調べてみると、「Surfin’ USA」に盗用問題(Songs on Trial: 12 Landmark Music Copyright Cases – Rolling Stone : "Surfin' U.S.A.," by the Beach Boys (1963) vs. "Sweet Little Sixteen," by Chuck Berry (1958))があったらしいのです。最も成功した曲がオリジナルと認められなかったというのはアーティストとしてこれ以上ない痛手と思いますが、そこで終わらず、表現者として歩み続けたのは素晴らしかったと思います。ちなみに、この頃作られたアルバム「Pet Sounds」はオールタイムランキング上位の常連(500 Greatest Albums of All Time – Rolling Stone #2)となっています。
- Deep Purple - Hush (1968)
- 活動期間:1968〜1976年
Deep Purple は、1970年代にハードロックバンドとして大成功を収めるグループですが、活動当初はこんな感じの音楽(当時流行のサイケデリック・ロック)をやっていました。しかもこの曲はオリジナルではなくカバーになります。メンバーは、ギター:Ritchie Blackmore、キーボード:Jon Lord、ドラム:Ian Paice が黄金期と共通しています。新しいジャンルで成功したグループなので、最初からそのスタイルを貫いていたんだろうと思っていましたが、彼らにも模索期はあったんですね。そして、模索期とは言え、楽曲の完成度は非常に高いものでした。
- Pink Floyd - See Emily Play (1967)
- 100 Greatest Artists – Rolling Stone #51
- 活動期間:1967〜2014年。
Pink Floyd は 1970年代以降、プログレッシブ・ロックのバンドとして大成功を収めるグループですが、活動当初はこんな感じの音楽(当時流行のサイケデリック・ロック)をやっていました。メンバーもベース:Roger Waters、キーボード:Richard Wright、ドラム:Nick Masonが黄金期と共通ですが、この頃の Pink Floyd は初期メンバーのSyd Barrettのワンマンバンドだったということです。彼は体調などの問題で60年代に脱退しますが、もしこのまま彼を中心とした音楽活動が続いていたら、各メンバーの才能の開花や70年代以降のPink Floydの傑作アルバムの存在もなかったのかもしれません(逆に更に素晴らしいアルバムが生まれていた可能性もあります)。バンドは生き物というか、いろいろな巡り合わせの不思議を思わされます。
- Procol Harum - A Whiter Shade of Pale (1967)
- 500 Greatest Songs of All Time – Rolling Stone #57
- 活動期間:1967〜1977年。
邦題は「青い影」。荘厳なオルガンの音色が印象的な曲で、特にイギリスで人気があり、BBCラジオ2が2009年に発表した「過去75年UKで最もプレイされた曲トップ10」第1位だったとのこと(BBC NEWS | Entertainment | Whiter Shade 'most played' song)。私も大好きな曲なんですが、Rockかと言われると「?」な感じです。クラシック要素を加えたロックはプログレッシブ・ロックとして広がっていきますが、プログレのバラード系名曲と比べてもちょっと違う風に感じます。(例えば、Pink Floyd - Wish You Were Here (Audio) - YouTube (Official)、King Crimson - Epitaph (Audio) - YouTube、Yes - Wonderous Stories (MV) - YouTube (Official))
- The Moody Blues - Nights In White Satin (1968)
- 活動期間:1964〜1974年、1978年〜現在
邦題は「サテンの夜」。「青い影」ダーク版といった感じの曲ですが、こちらはロック(プログレッシブ・ロック)と言われて違和感はありません(Procol Harumと違って、ムーディー・ブルースがこの後もずっとプログレに分類されるバンドだったというのもありますが)。wikipediaを見ると、London Festival Orchestra が協力したようですが(ビデオでもフルートを演奏するシーンが挿入されています)、曲の音自体はメロトロン(【池部楽器店】 Digital Mellotron M4000D - YouTube)で作られていたらしいです。こちらは面白いチャートアクションをした曲で、シングル発売の1968年はビルボード最高103位(イギリスでは19位)だったんですが、1972-3年に最高2位(イギリス9位)、更にイギリスでは1979年にも最高9位まで浮上しています(ムーディー・ブルース「Nights In White Satin (邦題: サテンの夜)」のゆっくりとしたチャートアクション)。
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John Lennon (Plastic Ono Band名義) - Give Peace A Chance (1969)
- 100 Greatest Artists – Rolling Stone #38
- 活動期間:1968〜1980年
「平和を我等に」という邦題がついていますが、原題は「平和にチャンスを」という意味で、歌詞を見ればわかる通り、主義主張を振りかざして言い争う人たちに対して、この言葉を送ったものです。当時の「Love & Peace」運動の流れを汲む平和活動パフォーマンスから生まれた曲なんですが、「Love & Peaceだって主義主張じゃん?」というツッコミをやんわりとかわす「提案」という形の歌詞になっているんですね。そして、言い争う人=everybody と「平和にチャンスを」と言う人=we を誰のこと(具体的には自分はどちらだろう)と考えるかでこの歌の意味は変わってくるでしょう。私の解釈は「言い争っているのも私たち、平和にチャンスをと言い続けるのも私たち」です。
英語の「and」には「AとB」という2つのものを並置する意味と、「AするとB」という「結果」を表す意味があります。「Love & Peace」は普通に訳せば「愛と平和」ですが、「愛すれば平和(安らぎ)」という解釈も可能かもしれません(ジョンとヨーコのパフォーマンスもこちらの方がしっくり来ます)。それでは「愛する」とは具体的にどういうことでしょう? この歌の個人的解釈によると、その答えは「すべてをweと捉えること」つまり「我等と彼等のように区別を設けるのではなく、分け隔てしないこと」ということになります。聖書の言葉にも近いのではないでしょうか。
結局、私がRockに感じた「新しい何か」とは何だったのか?という話まで行けませんでしたが、結論を言えば「何でもいい」です(「どうでもいい」ではありません)。音楽の「気持ち良さ」という軸はとてつもなく重要で、新しい試みも、さまざまなメッセージも、これとのバランスを欠いたものは、たぶん多くの人に届くことなく終わってしまうでしょう。ただ、新たに曲を作り、演奏する人たちには、他の誰でもない自分がそうしなければならなかった「何か」があり、それが私にとって「新しいもの」である可能性は今も変わらずあり続けるんですよね。逆に昔の曲が今の人たちにとっての「新しい何か」となる可能性もあるでしょう(私もそうだったわけですから)。というわけで、枯れることのないよう新しい音楽も聴きつつ、たまには昔の曲をここでも紹介したいと思います。
長々と書いてきましたが、最後までお付き合いいただけた方はお疲れ様でした (^^。紹介したビデオを全部見たら、それだけで1時間超えちゃうと思うのでそこまでする人はいないでしょうけどね。 あ、冥途乃日は外れてしまったので、レポートなどは無しになります。 それでは、また〜
※ Spotifyのプレイリストを置いておきます。
※ 1950年代アーティストの100 Greatest Artists – Rolling Stone と 500 Greatest Songs of All Time – Rolling Stone の情報も追加しておきます。
- Little Richard:100 Greatest Artists #8
- Long Tall Sally : 500 Greatest Songs of All Time #55
- Chuck Berry : 100 Greatest Artists #5
- Sweet Little Sixteen : 500 Greatest Songs of All Time #277
- Fats Domino : 100 Greatest Artists #25
- Ain't That a Shame : 500 Greatest Songs of All Time #438
- Eddie Cochran
- Summertime Blues : 500 Greatest Songs of All Time #74
- Gene Vincent
- Be-Bop-A-Lula : 500 Greatest Songs of All Time #103
- Bill Haley & His Comets
- Rock Around the Clock : 500 Greatest Songs of All Time #159
1960年代歌謡曲/ポップ
(承前)
さて、1950〜60年代は、欧米で大きな音楽の変化が起こった時期でしたが、日本でもこの時期から1990年代まで日本のチャートの大部分を占めた日本独自のポピュラー音楽が誕生しています。つまり、歌謡曲ですね。
この時代の日本の歌謡曲の特徴として、
- テレビの歌番組が主な舞台
- 楽曲は専門の職業作家が制作
- ストリングスやホーンを含むビッグバンドによる演奏
といったものがあります。
「日本の歌謡曲は、ほぼ洋楽のパクリ」といった意見もあったりしますが、私は、
- 日本の歌謡曲は洋楽を模倣しつつも、演奏の形態が洋楽で主流となったロック/ポップバンド形式ではなく、管弦楽を加えたビッグバンドのアレンジであった点に特徴があり、
- 単なる模倣ではなく、ビッグバンド用にアレンジする際に、メロディー、リズム、コード進行などに手を加えた「変奏曲」になっていたというのが実態で、
- この手法を長年行ったことで、洋楽のエッセンスを日本のポピュラーミュージックに取り入れることができるようになった
と主張したいです。
というわけで、実際にこの「変奏曲」アプローチがどのように行われていたかを60年代歌謡曲の名曲をサンプルに見てみましょう。紹介する曲の似ている点ではなく、違って聴こえる点(つまり、独創部分)に注目して、何より1960年代和洋名曲集として楽しんでいただけると幸いです。
- ザ・ピーナッツ - 恋のフーガ (1967)
youtu.be 作詞:なかにし礼、作曲:すぎやまこういち、編曲:宮川泰
ドラクエの音楽担当でお馴染みのすぎやまこういち作曲。ザ・ピーナッツは結成当初、主に洋楽のカバーを行なっており、ベートーベン作曲「エリーゼのために」を原曲とした「情熱の花」をカバーしてヒットさせている。「恋のフーガ」と「情熱の花」には似たフレーズがかなりあり、変奏曲アプローチの非常にわかりやすいサンプルなのではないかと思う。
- ザ・ピーナッツ - 情熱の花 (1959) ※1967に編曲し直して再録音
- Ludwig van Beethoven - エリーゼのために (1810)
- 由紀さおり - 夜明けのスキャット (1969)
作曲のいずみたくは、「手のひらに太陽を」などの童謡から、「世界は二人のために」などのヒット歌謡曲、CMソング、学校歌などまで幅広く手がけているが、この曲は「夜明けのスキャット - Wikipedia」にも書かれているように「盗作」を公に指摘されている。確かに「サウンド・オブ・サイレンス」を参照しているのは間違い無いと思うが、「Cumana」の「タララン」が似てるというのなら「サウンド・オブ・サイレンス」もこのパクリということになってしまうだろう。
- Simon & Garfuncle - The Sound of Silence (1965)
- ビルボードHot100最高1位(1966年ビルボード年間チャート54位)
- Cumana
- Simon & Garfuncle - The Sound of Silence (1965)
- ベッツィ&クリス - 白い色は恋人の色 (1969)
youtu.be 作詞:北山修 、作曲: 加藤和彦 、編曲: 若月明人
後にロックバンド=サディスティック・ミカ・バンドを結成する加藤和彦がザ・フォーク・クルセイダーズ時代に作曲した曲。1960年代は、サイモン&ガーファンクルを筆頭にフォークソングから何曲も世界的ヒットが出ている。当時の典型的なフォークソングはこんな感じ。
- Scott McKenzie - San Francisco (Be Sure to Wear Flowers in Your Hair) (1967)
- ビルボードHot100最高4位(1967年ビルボード年間チャート48位)
しかし、メロディの展開はむしろドゥワップのこちらに似ている気がする。既存のメロディに別のアレンジを加えることによる独創のサンプルとしたい。
- The CASCADES - Rhythm of the Rain (1962)
- ビルボードHot100最高3位(1963年ビルボード年間チャート4位)
- Scott McKenzie - San Francisco (Be Sure to Wear Flowers in Your Hair) (1967)
- いしだあゆみ - ブルー・ライト・ヨコハマ (1969)
youtu.be 作詞:橋本淳、作曲:筒美京平、編曲:筒美京平
日本歌謡曲史上最大のヒットメーカー(総売上枚数約7,600万枚)筒美京平の初期作品。「ブルー・ライト・ヨコハマ」は60年代の作品では最も売れた曲だが、最も有名な曲は「サザエさん」ではなかろうか。ヒット曲を量産できたせいか、筒美京平は「パクリ」疑惑をかなり持たれている作曲家でもある。しかし、もしそうならアメリカの60〜70年代の大ヒットメーカー Holland–Dozier–Holland(いわゆるモータウン・サウンド)もパクっているはず。という観点から作品リストを見直してみると、どうもこの曲が怪しい。しかし、曲の前半のメロディだけなら確かにありそうなのだが、全体が似ている曲は見当たらなかった。確証は全くないが、複数の曲からの組み合わせならあるかもしれないので、なんとなくパーツが似てそうな曲を並べてみた。
- Jimmy Ruffin - What Becomes of the Brokenhearted (1966)
- ビルボードHot100最高7位(1966年ビルボード年間チャート14位)
- The Supremes - Stop! In the Name of Love (1965)
- ビルボードHot100最高1位(1965年ビルボード年間チャート20位)
- Martha and The Vandellas - Dancing in the Street (1964)
- ビルボードHot100最高2位(1964年ビルボード年間チャート17位)
- Jimmy Ruffin - What Becomes of the Brokenhearted (1966)
- 奥村チヨ - 恋泥棒 (1969)
www.youtube.com 作詞:なかにし礼、作曲:鈴木邦彦、編曲:鈴木邦彦
鈴木邦彦は主に1960〜70年代にヒット曲を多く出した作曲家だが、一番有名なのはアニメ「あしたのジョー」の主題歌かもしれない。洋楽を聴くようになって改めて聴いてみると、サビの「あなたのことを〜」という部分は当時の洋楽にありがちなものだと気づいた。例えば次の曲に似ている。
- The Searchers - Love Potion No. 9 (1964)
- ビルボードHot100最高3位(1965年ビルボード年間チャート70位)
- Shocking Blue - Venus (1969年10月2日) ※ 「恋泥棒」は1969年10月1日リリース ※ 追記:日本語の wikipedia を見ると(ヴィーナス (ショッキング・ブルーの曲) - Wikipedia)オランダで1969年7月リリースなので Venus の方が先でしたね。これは微妙だな
- ビルボードHot100最高1位(1970年ビルボード年間チャート33位)
- The Searchers - Love Potion No. 9 (1964)
- 加山雄三 - お嫁においで (1966)
youtu.be 作詞:岩谷時子、作曲:弾厚作(加山雄三本人)
ウクレレ→ハワイアンなイメージの名曲だが、聴き直してみると意外とこの超有名曲に展開が似ている気がした。
- Connie Francis - Vacation (1962)
- ビルボードHot100最高9位
- Cliff Richard - Summer Holiday (1963)
- 全英最高3位(全英年間チャート7位)
- Connie Francis - Vacation (1962)
- ザ・タイガース - 花の首飾り (1968)
作詞:菅原房子(補作:なかにし礼)、作曲:すぎやまこういち、編曲:すぎやまこういち
グループ・サウンズを代表する名曲。グループ・サウンズは欧米のロックバンドに強い影響を受けているので、バンド形態でも演奏できるはずなのだが、GSの有名曲のオリジナルを聴いてみると管弦楽器(主にストリング)が追加されたアレンジのものが多い(テンプターズ - エメラルドの伝説- YouTube、スパイダーズ - 夕陽が泣いている - YouTubeなど)。この曲もそうなのだが、これは「ビートルズのYesterdayみたいなバラード」という「発注」を受けて作られた曲ではないかと思った(「Yesterday」のオリジナルもストリングスが使われている)。パクリというより、注文に忠実に作られた職人芸の作品という印象である。
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The Beatles - Yesterday (1965)
- ビルボードHot100最高1位
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The Beatles - Hey Jude (1968年)
- ビルボードHot100最高1位(1968年ビルボード年間チャート1位)
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- 美空ひばり - 真赤な太陽 (1967)
youtu.be 作詞:吉岡治、作曲:原信夫、編曲:井上忠夫(井上大輔)
作曲の原信夫は70年代のテレビの歌番組を見ていた人なら御存知「原信夫とシャープス・アンド・フラッツ」のバンドリーダーで、ジャズ畑の人である。「真赤な太陽」は当時大人気だったGS風の曲として話題になったので、これはほぼ間違いなく「発注品」である。ということはGSの元となった欧米ポップス、とりわけイギリスのポップ/ロックバンドの曲を参照したに違いない、という読みで当時のヒット曲を聞き返してみると、次の曲がメロディ的には似ていると感じた(アレンジは全く違い、「真赤な太陽」の方はイントロからしてジャズ風味である)。
- Herman's Hermits - There's a Kind of Hush (1967)
- ビルボードHot100最高4位(1967年ビルボード年間チャート50位)
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Dave Dee, Dozy, Beaky, Mick & Tich - The Legend of Xanadu (1968)
- 全英最高1位(1968年全英年間チャート26位)
- Herman's Hermits - There's a Kind of Hush (1967)
- 美空ひばり - むらさきの夜明け (1968)
youtu.be 作詞:吉岡治、作曲:原信夫、編曲:森岡賢一郎
美空ひばりのGS風歌謡曲第2弾。なので、これもきっと何か元ネタがあるに違いない、と思っていろいろ聴いてみたのだが、あまりしっくりくるものがなかった。ロック/ポップスではなく、ジャズ/R&B方面を参照しているのかもしれない。しかし、「真赤な太陽」より「むらさきの夜明け」の方がかなり好きなので、無理やり紹介する。洋楽の方は候補に考えていたちょっとダークな曲調のものから。
- The Zombies - She's Not There (1964)
- ビルボードHot100最高2位
- Grass Roots - Let's Live for Today (1967)
- ビルボードHot100最高8位(1967年ビルボード年間チャート70位)
- The Zombies - She's Not There (1964)
- 坂本九 - 上を向いて歩こう (1961) ※コンピレーションビデオ
youtu.be 作詞:永六輔、作曲:中村八大、作曲:中村八大
- ビルボードHot100最高1位(1963年ビルボード年間チャート13位)
最後に世界で最も有名な和製ポップスを。作曲の中村八大は坂本九作品以外に「こんにちは赤ちゃん」「笑点」のテーマ曲などを手がけている。1961年の作品なので、この曲のインスピレーション元を探ろうと思ったら50年代の作品を調べないといけないのだが、さすがにポール・アンカとニール・セダカぐらいしか知りません。
- Paul Anka - Diana (1957)
- ビルボードTop100最高2位(1957年ビルボード年間チャート24位)
- Neil Sedaka - Happy Birthday Sweet Sixteen (1961)
- ビルボードHot100最高6位
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Cliff Richard - Congratulations (1968)
- 全英最高1位(1968年全英年間チャート19位)
まあ、こういうのは似ていると思うと何でも似たように聞こえてしまうもので、吉田秋生『カリフォルニア物語』を愛する姉は、その影響でこの曲を偏愛していたのですが、
- Mamas and Papas - California Dreamin' (1965)
- ビルボードHot100最高4位(1966年ビルボード年間チャート10位)
この1年後に作られた有名曲を「マネ」だと言って譲りませんでした。たぶん普通の意見ではないです。(イントロと、California Dreamin' の間奏部分(Bus Stop ではコーラスになる)が変奏曲パターンっぽいですかね)
- The Hollies - Bus Stop (1966)
- ビルボードHot100最高5位(1966年ビルボード年間チャート45位)
さて、ここまで「日本の歌謡曲は欧米の曲のパクリというより、変奏曲のアプローチであり、ここには独創が存在する」という主張を主にしてきたわけですが、最後に「変奏曲」の実例を紹介しておきます。
※ 100 Greatest Artists – Rolling Stone と 500 Greatest Songs of All Time – Rolling Stone の情報を追加しておきます。
- Simon and Garfunkel : 100 Greatest Artists #40
- The Sound of Silence : 500 Greatest Songs of All Time #157
- Diana Ross and the Supremes : 100 Greatest Artists #96
- Martha and the Vandellas
- Dancing in the Street : 500 Greatest Songs of All Time #40
- The Beatles : 100 Greatest Artists #1
- The Zombies
- She's Not There : 500 Greatest Songs of All Time #297
- The Mamas and the Papas
- California Dreamin' : 500 Greatest Songs of All Time #89
1950年代ポピュラー音楽
「和洋折衷」の記事で書き忘れましたが、「和洋折衷」音楽だとやはりこちらを紹介しておかないといけなかったですね。
歌謡曲+マンボ。マンボは1950年代に世界的に流行した音楽ですが、代表曲は誰でも一度は聞いたことがあるであろう、この曲です。
- Perez Prado - マンボNo.5 (1949) ※アメリカでヒットしたのは1950年
1950年代は、マンボだけでなく、チャチャチャ、ルンバ、カリプソ、ボサノバなどの「中南米ルーツのダンスミュージック」のスタイルが確立し、世界で流行しました。この辺の有名曲もいくつか挙げておきましょう。これも一度は聞いたことがあると思いますよ。
- ルンバ:西田佐知子 - コーヒールンバ (1961) ※オリジナルは1958年録音のインストらしい
- カリプソ:Harry Belafonte - バナナ・ボート (1956) ※動画は "We are the World"(1985) 録音で集まった USA for Africa の一コマ
- ボサノバ:Sergio Mendes & Brasil 66 - Mas que nada (1966) ※ボサノバはそのスタイルが確立したのが50年代ですが、世界的になったのは60年代のこのヒット曲からです
「なぜ、この時期に流行したのがダンスミュージックだったのか」というと、1950年代前半はまだ家庭でのレコード再生装置はそれほど普及しておらず、一般の人が音楽を楽しむ場所としてミュージックホールやナイトクラブがあり、そこで演奏されるのが主にジャズやダンスミュージックだったかららしいです(さすがにリアルタイムでは知らないので推測です。興味のある方は ポピュラー音楽 - Wikipedia あたりを手掛かりに調べてみてください)。
- 1950年代ナイトクラブの様子(映画のシーンっぽいですが)
- 1950年代ジャズクラブの様子(ロンドン)
ポピュラー音楽 - Wikipediaは、歴史を縦軸にして、どのような音楽がメインストリームに取り入れられてきたかを横軸として読むと面白いと思いますが、1920年代以降は「テクノロジーの発達」という軸も入ってきます。1950年代から60年代のポピュラー音楽に大きな影響を与えたテクノロジーとして、
- レコード装置
- エレキギター
- テレビ
が挙げられるでしょう。そして、これらの普及に合わせたように世界中で爆発的な人気を呼んだのがこちらでした。
- Elvis Presley - Hound Dog (1956)
- Elvis Presley - Jailhouse Rock (1957)
ロックの誕生です。※余談ですが、エレキギターと言えば、Les Paul。
- Les Paul and Mary Ford - How High The Moon (1951)
さて、ロックの誕生で変わったことの一つに、これ以降のメインストリームの音楽が4〜5人のロック/ポップバンド編成(ギター、ベース、ドラムが中心)で演奏できるものに変わっていったということがあります。それまでは普通のポップソングでも管弦楽を加えたアレンジが普通でした。
- Bing Crosby - White Christmas (1942, 1950 ...) ※史上最も売れた曲。ピアノにバイオリンとフルートが聴こえる
Billboard No.1ヒット曲のリストを見ても、1950-1958年の方は楽団(Percy Faithとか)の曲や映画のテーマ曲(「第三の男」のテーマなんか)などがありますが、60年代の特に後半からは、ロック、フォーク、R&B がほとんどになっていきます。
- List of Billboard number-one singles from 1950 to 1958 - Wikipedia
- List of Billboard Hot 100 number-one singles from 1958 to 1969 - Wikipedia
ロック誕生以降のNo.1ヒットからいくつか紹介しましょう。
- Everly Brothers - All I Have To Do Is Dream (1958) / Cathy's Clown (1960)
- The Marvelettes - Please Mr. Postman (1961)
- Pat Boone - Moody River (1961)
- The Tokens - The Lion Sleeps Tonight (1961)
この頃は、アレンジ的にはコーラスが結構重要な役割を果たしていたっぽいですね。
(続く)
※ 100 Greatest Artists – Rolling Stone と 500 Greatest Songs of All Time – Rolling Stone の情報を追加しておきます。
- Elvis Presley : 100 Greatest Artists #3
- Hound Dog : 500 Greatest Songs of All Time #19
- Jailhouse Rock : 500 Greatest Songs of All Time #67
- The Everly Brothers : 100 Greatest Artists #33
- All I Have To Do Is Dream : 500 Greatest Songs of All Time #142
- Cathy's Clown : 500 Greatest Songs of All Time #150
ワールドツアー【激動】第一弾発表
- ツアースケジュール(第一弾はヨーロッパのみ)
- チケット情報(値段、発売日、VIP内容)
- アメリカ横断ツアーの予告(英語版では「USA and more」となっているのでメキシコも入ると予想)
- Live Nationとの提携のアナウンス(提携は次のアメリカツアーから開始)
- メンバーのコメント
が書かれています。
世間は連休だというのに急に動き出したね(笑
とりあえず、ここまでで決まっているスケジュールを貼っておきます。
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5月10日 / 東京 / TSUTAYA O-EAST / 冥土乃日
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6月1日 / 金沢 / 石川県産業展示館 / 百万石音楽祭2019 ~ミリオンロックフェスティバル~
6月8日 / 大阪 / なんばHATCH / BAND-MAID WORLD DOMINATION TOUR 2019【激動】
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6月22日 / London / Islington Assembly Hall (キャパ890人) / BAND-MAID WORLD DOMINATION TOUR 2019 【激動】 ~gekidou~
6月23日 / Paris / Le Trabendo (キャパ700人) / BAND-MAID WORLD DOMINATION TOUR 2019 【激動】 ~gekidou~
6月24日 / Bochum / Zeche (キャパ 1000人) / BAND-MAID WORLD DOMINATION TOUR 2019 【激動】 ~gekidou~
6月26日 / Hamburg / DAS LOGO (キャパ450人) / BAND-MAID WORLD DOMINATION TOUR 2019 【激動】 ~gekidou~
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7月11日 / 名古屋 / DIAMOND HALL / BAND-MAID WORLD DOMINATION TOUR 2019【激動】
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7月30日 / 東京 / 昭和女子大学人見記念講堂 / BAND-MAID WORLD DOMINATION TOUR 2019【激動】
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8月16 or 17日 / 石狩 / 石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ / RISING SUN ROCK FESTIVAL 2019 in EZO
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10月5日 / 鹿児島 / 桜島多目的広場&溶岩グラウンド / THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2019
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「激動」はなんて訳すのかと思ったら、gekidou のまんまで行くみたいですね。
名古屋と東京の間が空いているので、ここでアメリカツアーがあるかもしれません。
※ニュースリリースだと、「アメリカ横断ツアーも年内開催」なのでもっと後かな
あと、Live Nation と提携したので、Live Nation主催の海外フェス(Download、Leeds/Readingなどが有名ですが、アメリカのメタル以外にもオープンなロックフェスがあればいいかも)とかもあるかもしれませんね。
※ Download(今年は6月14〜16日)なんかはもう lineup決定済みみたいですね。今年は日本から MAN WITH A MISSION、LOVEBITES、CRYSTAL LAKE が出ます。CRYSTAL LAKE は 6月14日〜7月4日の長期ヨーロッパツアーも行い、19日ロンドン、20日パリ、21、22、26、29日ドイツとかなりのニアミスですね。
※あと、ちょうど the GazettE がワールドツアーで 6月11〜21日がヨーロッパツアーでした(11日ロンドン、14日パリ、16日ケルン、18日ミュンヘン、21日モスクワ)。なんかこの頃に日本のバンドがヨーロッパに集まってますね。BABYMETALも7月2日ロンドンです。
※春ねむりも5月29日〜6月15日までヨーロッパツアーでした。小鳩と彩姫とはラジオで共演したことあるので面識ありますね。
和洋折衷
昨日の記事で「和」とロックを融合させたバンドとして竜童組を紹介しましたが、こういう記事を見つけました。
記事の内容は納得できるものなので、私も知っている範囲で、BAND-MAIKOみたいに Rock/Popsに「和」の要素を取り入れる試みにはどんなものがあったかを書いてみようと思います。
洋楽での和楽器の使用
洋楽に「和」の要素を取り入れる方法として、西洋楽器のパートをそれに似た和楽器で置き換える(ピアノ→琴、ギター→三味線、サックス→尺八、ドラム→和太鼓、フルート→篠笛など)というのがあります(和と洋では音階が違うのでアレンジも必要かもしれません)。
西洋音楽市場での和楽器の使用
先の記事にあるように、アメリカ・ヨーロッパの音楽市場で「和」テイストが注目されたのは、 A Taste of Honey「Sukiyaki」(坂本九「上を向いて歩こう」のカバー。1981年にビルボード全米シングル最高3位の大ヒットとなった)で間違いないと思います。
A Taste of Honey - Sukiyaki (1980)
そして、Sukiyaki の琴奏者が結成したアメリカのフュージョングループが Hiroshima なわけですが、このグループは日本でも80年代にCMの音楽を担当していたことがあるので、ご存知の方もいると思います。
サントリーホワイトCM (1982-84) ※ 2:08〜4:22 まで
夜桜、荒海、花火、富士山の4パターンあり、それぞれ違う曲ですが、Hiroshimaの担当です。もう一つ別バージョンもありました。
CMで使われている曲のうち、夜桜はCMオリジナルの「ホワイトドリーム・夜桜」。花火はサードアルバム収録の「San Say」なのはわかっていますが、後の曲名は確認できませんでした。
Hiroshima - San Say (1983)
Hiroshima は、Spotify、Apple Music、Amazon Music Unlimited で聴けます。
現代音楽・ジャズでの和楽器の使用
和楽器の使用例だと、実験的要素を取り入れやすい現代音楽やジャズの方が古く、'60〜70年代からあるようです。現代音楽では、武満徹(「ノヴェンバー・ステップス」(1967) などの作曲)、ジャズでは尺八の山本邦山などが有名だと思います。
山本邦山+Blue Coats Orchestra - Take Five
洋楽の「和」風カバー or 純邦楽の「洋」風カバー
「和」と「洋」の混成ということだと、どちらかの曲を逆のスタイルでカバーする方法もあります。
洋楽の「和」風カバー
洋楽を和風にアレンジする方向だと、一番有名なのはこれですかね。
金沢明子 - イエローサブマリン音頭 (1982) ※大瀧詠一プロデュース
日本人に受けるタイプの洋楽と、音頭の相性は良いらしく(というか、音頭にできる洋楽が日本人に受けやすいのかも)、去年この tweet が話題になりました。
中野駅前大盆踊り大会
— はやとデラロッサ (@hayatodelarossa) August 14, 2018
ボンジョビで踊ってんだけど pic.twitter.com/hdMqLN0hYN
和楽器で J-Pop や洋楽をカバーする例は多く、YouTubeにもかなり動画が上がっています(「三味線(などの和楽器名) カバー」で検索すると結構見つかります)。今回探してみたところ、以下のような大規模編成のカバー動画も見つかりました。
和楽器+オーケストラ+黒人ボーカル - We Will Rock You ※ 2011年
純邦楽の「洋」風カバー
日本の純邦楽(民謡、雅楽など)を洋楽編成でカバーするアプローチだと、寺内タケシの民謡カバーが有名だと思います。
他の民謡の洋風カバーも探してみたんですが、「和」+「洋」の素晴らしい民謡カバーを見つけたので、ここに挙げておきます。
山本邦山(尺八)+石塚まみ(ピアノ、歌) - 竹田の子守唄
ワールドミュージックとしての邦楽
沖縄
世界的には、ある地域固有の民族音楽が西洋音楽と融合して新しいポップミュージックを生み出すことがあります。最も成功したのはレゲエでしょう。レゲエのムーブメントは60年代末から70年代初めに起こりましたが、同じような動きが同じ時期に世界中で起きています。アフロビートが産まれたのもこの頃で、日本でも沖縄から新しいスタイルの音楽が産まれました。
喜納昌吉&チャンプルーズ - ハイサイおじさん (1969) ※ 日本でヒットしたのは沖縄返還の1972年
喜納昌吉は「花〜すべての人の心に花を〜」も有名ですね。
りんけんバンド - ありがとう (1987)
上々颱風 - 愛より青い海 (1991)
これら沖縄ルーツの音楽の特徴は、三線(蛇皮線)が入るところです。
ジャパネスク
ジャパネスクは、「外国人の目に異国情趣が強く感じられる純日本的な雰囲気(コトバンクより)」のことで、最初は「外国人がイメージする、実際の日本とは非なる異世界」のことも指していたと思いますが、ここでは「外国人が求めている日本の姿」みたいな意味ですね。外国人にとっての非日常で、外人が日本に来てこれがないとがっかりしちゃうようなものです。
「今現在の日本人として」というより、一度自分を日本人以外に客体視してから日本全体を(歴史的視点からも)俯瞰した上で、「日本らしさ」を取り出してみたもの、という感じですね。
サディスティック・ミカ・バンド - 黒船 (1974)
Rockの大物プロデューサー Chris Thomas が自ら望んでプロデュースを行った傑作『黒船』。冒頭「墨絵の国へ」のイントロのキーボード(琴の音を意識していると思われる)や「よろしくどうぞ」のお囃子にジャパネスクが見て取れると思います。
『黒船』については以下が詳しいです。
曲では「タイムマシンにお願い」が有名ですが、私は「どんたく」が好きですね。
こちらはジャパネスクとは少し違うと思いますが(どちらかというと「沖縄」の本土版でしょうか)、ポップス(演歌ではありますが)に三味線を取り入れ、ヒットさせたという意味で画期的でした。
竜童組 - ザ・カムイ (1985)
再掲。詳細は昨日の記事を参照ください。
和楽器はそんなに入っていませんが、全体の世界観は「ジャパネスク(という異世界)」の典型例と言えるかも。この頃は、EXILE や AAA というヒットメーカーもジャパネスクっぽい楽曲を出しています。
Monkey Majik × 吉田兄弟 - Change (2011)
吉田兄弟は津軽三味線の奏者。コラボの経緯はわかりませんが、Monkey Majik と吉田兄弟は、この後合同で北米ツアーを行ったとのこと。
燦然と輝く「和」メタルの傑作。近年 J-Rock が海外で受け入れられるようになったのは、このグループとこの楽曲の影響も大きかったはず。
音楽における「ジャパネスク」の完全体。PV視聴数も1億回を超えました。
BAND-MAIKOも「ジャパネスク」の括りですかね。しかし、こうして見ると、「ジャパネスク」に最低必要なのは「和楽器」より「着物」の方なのかもしれません。BABYMETALはライブで着物を着ませんが、日舞で代用って感じかな。
SPECTRUM・竜童組
SPECTRUM
JAGATARA、VIBRASTONEとホーンセクション付きのバンドを紹介しましたが、メジャーなところでも、米米CLUBや東京スカパラダイスオーケストラと'80年代に日本で結成されたホーンセクション付きのバンドが意外とあります。そして、それら日本のホーンセクション付きバンドの元祖と言えるのがSPECTRUMです。
SPECTRUM - LIVE/TIME BREAK + STUDIO LIVE 1979 トレイラー
このビデオは下のDVDの2013年タワーレコード限定版発売に合わせた正式なトレーラーです。
SPECTRUM LIVE/TIME BREAK~Spectalism 2004~ [DVD]
- 出版社/メーカー: ダイプロ・エックス
- 発売日: 2004/01/21
- メディア: DVD
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以下は、このライブDVDからのクリップ。
SPRCTRUM - SUNRISE (1980)
昭和のプロレスファンならご存知。スタン・ハンセンの入場曲として有名です。
SPECTRUM - 侍's (1980)
インスト曲。中盤のソロパート以降が聴きどころ。
SPECTRUMは今でも根強い人気があるようで、Spotify、Apple Music、Amazon Prime Music に音源があります。ビデオ作品はもう一つ、1981年の武道館解散ライブがあります。
竜童組
ホーンセクション付きのバンドをもう一つ。80-90年代はワールドミュージックが結構注目されていた時期なのですが、その流れに沿うように日本の「和」の要素をロックミュージックに取り入れようという試みも見られました。その一つが宇崎竜童が率いた竜童組です。
竜童組 - ザ・カムイ (1985) ※ with 林英哲(和太鼓)
完全に「和」テイストな楽曲だと思うんですが、和楽器は打楽器のみで、ドラム、ベース、ギター、キーボードにホーンセクション、さらにはバイオリン、ハープも加わっています。竜童組はライブ映像がいくつかYouTubeにもありますが、「ザ・カムイ」は飛び抜けて素晴らしい曲だと思います。
竜童組は、現在配信はなく、正式音源はCDのみ。
YouTubeに上がっているビデオもテレビ出演時のもので、映像作品としては手に入らないものだと思います。
VIBRASTONE
VIBRASTONE
週刊文春「考えるヒット」でお馴染みの近田春夫が90年代に率いたヒップホップグループ。ヒッポホップはあまり聴かないんですが、ギターがJAGATARAと同じ人だったので、それをきっかけに聴くようになりました。
VIBRASTONE - WABISABI (1989)
VIBRASTONE - YADA (1992)
詳しくないので違うかもしれませんが、ホーンセクション付きのヒップホップグループというのは珍しいんじゃないですかね。ホーンセクションは、ヒップホップよりファンク(EW&F、Tower of Power、Parliamentなど)に多いという印象です。
近田春夫先生がこれ以前にどんな音楽をやっていたのかもほとんど知らなかったので、今回検索してみたんですが、次のビデオを見つけました。
ハルヲフォン - FUNKYダッコNo.1 (1975)
近田春夫のメジャーデビュー作(ハルヲフォン名義)なんですが、聴けばわかる通り、どファンクですね。他の作品は(YouTubeで見つけた限りでは)ど真ん中な「歌謡曲」が多い感じなので、これは異色作のようです。ダッコちゃん人形とのコラボだったので(途中でステージから投げ込んでいるのがそれ)、ダッコちゃん→黒人→ファンクとなったのかな?
VIBRASTONE結成の経緯はわかりませんでしたが、近田春夫に「JAGATARAとの交流(セッションやレコーディングに参加している)」があり、「ファンクがルーツの一つ」だったことは関係してるんじゃないかと思います。
VIBRASTONEは Spotifyにはありませんが(訂正:追加されました)、Apple Music と Amazon Music Unlimitedにあります。
VIBRASTONEのライブ動画は「VIDEO STONE」という作品のものっぽいのですが、VHSビデオのみの販売で現在は入手が難しそうです。